CNCへの最後の一歩、CNC。
(この構成図は正直古いです・・・パラレルケーブル(笑))
CNC(computerized numerical control) 。
言葉としては「コンピュータ数値制御」を意味しており、コンピュータで数値的に「なにか」を制御することを指します。
その「なにか」は我々の用途としては、当然「工作機械」であり、それはフライスであり旋盤です。とはいえ、単なるフライスや旋盤をCNCソフトウエアで制御することは当然できないわけで、正しくはCNCフライスやCNC旋盤に取り付けられた「ステッピングモータ」を制御する、というわけです。
CNCはシステム構成の名称であり、
- ソフトウエア
- ステッピングモータードライブ基盤
- (制御される)ステッピングモーター
で構成されます。これらの構成要素は関連があり、
- ソフトウエアは、ステッピングモータードライブ基盤に合わせた設定が必要
- ステッピングモータードライブ基盤はステッピングモーターに合わせた設定が必要
なのです。
ですから、CNCを組もう、と思ったら
- 使用するステッピングモーターに合わせたステッピングモータードライブ基盤を用意して
- ステッピングモータードライブ基盤と組み合わせて使用できるソフトウエアを選択する
必要があります。そして、それらの設定は難解です、とても独力でできるものではありません。
したがって
- 実績のあるソフトウエアとステッピングモータードライブ基盤、ステッピングモーターを選択する
- サポートを受けられるショップから入手する
- 事例が多く紹介されているものを選択する
ことはとても大切なことなのです。
あ、忘れてた。つまりはCNCのお仕事は
- Gコード(ツールパス)を受け取り
- CNCフライスやCNC旋盤を動かして
- 加工を行う
ことにあります。
そう、つまりはここまで本サイトを読み込んでくださった、あなたの最後の一歩なんです!。張り切ってまいりましょう!
ステッピングモーターとは?
CNCフライスやCNC旋盤に近い方からまいります。まずはステッピングモーター。
ステッピングモーターとは、我々が使用するようなアマチュア向けCNCフライス、CNC旋盤を駆動するためによく使用されているモーターです。
主軸などに使用されるモーターと異なりトルクはそこそこですし最大回転数も遅いのですが、正確に回転角度を決めることができます。
通常のモーターは直流ないし交流の電源に接続することで回転しますが、ステッピングモーターは駆動パルス(断続的な信号)を受け取ることで回転・停止します。
その仕組みなどは(ステッピングモータードライブ基盤を自作でもしない限り)知る必要はまあ、ありません。以下を理解していれば、十分でしょう。
ユニポーラとバイポーラの2種類がある
ユニポーラとバイポーラの違いは、モーターの巻き線に流れる電流の方向です。
- ユニポーラは一方方向
- バイポーラは双方向
に流れます。どちらがいいかというと一長一短なのですが、それよりも問題はユニポーラにはユニポーラ専用のドライブ基盤が、バイポーラにはバイポーラ専用のドライブ基盤が必要です。そして大抵の場合、アマチュアが使用するCNC用のドライブ基盤はユニポーラ専用であることがほとんど。
したがってポイントは
- もしすでにCNCマシンを持っているのであれば、使用しているステッピングモーターがどちらのタイプか確認しましょう
- これからCNCマシンを組むためにステッピングモーターを選ぶのであれば、ユニポーラのステッピングモーターを選択しましょう
となります。
マイクロステップという機能がある
マイクロステップ。細かいステップ?そう、その通りです。
ステッピングモーターは駆動パルスで動きます、とお話しいたしました。パルスは断続的なものですから、細かく見るとステッピングモーターの軸はなめらかに、ではなくカクカクカクカク・・・と細かく振動するように動きます(とても細かい動きですから、目で見てもわかりません)。
ステッピングモーターの主軸は台形ねじやボールねじで減速されてテーブルなどの各軸に繋がりますから実際にはその細かさ(粗さ)でテーブルが動くわけではないのですが、それでもカーブを削っているときにはこのカクカクはかなり気になるものです。
そこでマイクロステップ機能を使用します。
ステッピングモーターによりますが、大抵は1/4や1/8のマイクロステップ機能を持っています。これは駆動パルスの飛ばし方を工夫して、さらに細かい角度でステッピングモーターの軸をコントロールするものです。もちろんこれを効かせれば(CNCソフトウェア側で制御します)、カーブを削っても滑らかに仕上がります。
が、いいことでばかりではなくトルクが落ちる傾向にあります。トルクが落ちれば・・・脱調します。
脱調・・・
我々アマチュア金属加工マニア、CNC部(?)が避けて通れないのがこの脱調。
ステッピングモーターがトルク負けし、与えられた駆動パルスの通りに動かないことを指します。CNCソフトウェアがGコードの通りに正確に「X軸よ、今いる地点から50.00mm右に移動するのだ!」と命令してるのに、根性のないステッピングモーター君が「なんか軸が重いよおお・・・動かないよお・・・」と軸を回しきれず、48.20mmとかで動作をやめてしまうのです。
原因はスライドテーブルのアリ溝の調整不良(きつく締めつけ過ぎ)や、切り込み量が大きすぎることによる過大な切削抵抗。
これが発生すると悲劇です。
これ以降の加工はすべてその「さっき脱調した距離」の分だけずれたまま、加工が続きます。そろそろ加工終わったかなあ、とウキウキ気分でCNCフライスの前に戻ってきたあなたは脱力すること間違いなし・・・
こうならないためには、まずはアリ溝調整を入念に行い切り込み量を減らすのはもちろんのこと、できるだけ高トルクのステッピングモーターを選択することです。とはいっても諸元を見ても素人にはなかなか判別できず、できるだけ事例のあるモーターを選ぶのが得策といえます。
結局、お勧めは?
私が使用しているのはアマチュアのしかも自作派のCNC愛好家で実績の多い、
日本サーボ KH56QM2-912
です。ずいぶん古いモーターですが、まだ現役、手に入るはず!
ステッピングモータードライブ基盤とは?
ステッピングモータードライブ基盤。コレがなければCNCソフトウェアは駆動パルスをステッピングモーターに送ることができません。
ドライブ基盤は通常の場合パソコンにインストールされたCNCソフトウエアから送信された命令を解読し、実際にステッピングモーターを駆動するためのパルスを発生させます。
パソコンとドライブ基盤ははUSBケーブルやシリアルポート・パラレルポートで接続されます。また、ドライブ基盤とステッピングモーターは専用のケーブル接続されます。
ドライブ基盤はほとんどの場合、オリジナルマインドなどで完成品を購入することになると思います(ただし、オリジナルマインドの基盤は比較的お高め)。ネットを丹念に探せば安いドライブ基盤を見つけることができることもありますが、それはサポートの有無に比例すると思ってください。
ドライブ基盤を選ぶうえで、覚えておくべきことは以下の通りです。
ユニポーラ用基板とバイポーラ用基板の2種類がある
ステッピングモーターでご説明したとおり、ドライブ基盤もユニポーラ用、バイポーラ用があります。ほとんどの場合、アマチュア金属加工家が入手できるドライブ基盤はユニポーラ用です。準備したステッピングモーターと合わせてください。
最大ドライブ電流は大事
ドライブ基盤に搭載あれた素子によって、ステッピングモーターに流せるドライブ電流の量が変わります。大きいトルクを発揮するモーターは、大きい電流量を要求します。3Aあれば安心ですが、2A位でも大丈夫かと思います。
制御できる軸数に注意
CNC旋盤はその制御に2軸、CNCフライスは3軸必要です。さらにA軸に手を出すと4軸必要になるかもしれません。
制御できる軸数はほとんどの場合3軸です。もしA軸加工に将来的にトライするのであれば、4軸制御可能なドライブ基盤を選びましょう。
マイクロステップ駆動対応であること
これができるとできないとでは、仕上がりに大きな差がでます。最低でも1/4、できれば1/8対応のドライブ基盤を選びましょう。
日本語マニュアルが入手できること
日本語でのサポートが受けられるまたはマニュアルが入手できることは、強く推奨項目です。特にWebに事例が紹介されていないドライブ基盤の使用はかなり難易度が高く、日本語のマニュアルなければかなり苦労することになります。
ピンアサイン、外部拡張回路図が入手できること
これも大事です。特に中古基盤を購入するときに要注意です。
パソコンとドライブ基盤を繋ぐケーブルのピンアサイン、これはCNCソフトウェアで設定するのですがこれが1つでも間違っているとCNCは動きません。どのピンにどの信号を流すか、その値はHiでONなのかLoでONなのか。手当たり次第では間違いなく攻略不可能、アサイン表の入手は必須です。
また、ドライブ基盤は主軸回転のON/OFF、テーブル位置のリミッタなどを制御できる外部拡張回路を取り付けることができます。これも回路図がないと手も足も出ないところです。
結局、お勧めは?
私が修理を繰り返しながらしつこく愛用しているのは
オリジナルマインド QUATTRO-1
です・・・が、残念なことにすでに生産中止。4軸の駆動パルスを取り出せてパワーもあり、いい基盤だったのですが・・・
今、お勧めするなら
でしょうか?私の使用経験がないので安直におすすめしてはいけないのですが、恐らくこれは3軸しかないものの、QUATTRO-1の正統後継ドライブ基盤なのだと思われます。
オリジナルマインドさんのドライブ基盤は比較的・・・といいますかかなり高め。しかしサポートは素晴らしいです。もしあなたがこれらのドライブ基盤を購入してなにか迷うことがあっても、適切かつ迅速なサポートが受けられるはずです。
あ、私オリジナルマインドさんから何ももらってませんからねw
CNCソフトウエアとは?
CNCソフトウェア。
パソコンにインストールして使用します。今まで苦労して作ったGコード(ツールパス)を読み込み、内容を解釈してステッピングモータードライブ基盤に信号を送り込む機能を持っています。
基本的に3軸、または4軸分の駆動信号を生成しドライブ基盤に送り込むだけなのでCNCフライス用、CNC旋盤用を兼用することができます。
CNCフライスに使用する場合はXYZの3軸分の記述を含んだGコードを読めばいいですし、CNC旋盤に使用する場合はXYの2軸分の記述を含んだGコードを読めばOKです。
CAD、CAMと同じように有償/無償が存在します。もっともアマチュア金属加工マニアに支持されているのは有償ソフトウエアであるMach3ですね。
無償でも使用できますが短いGコードしか実行できません。早々に有償化することになるでしょう。ちなみに私愛用のCNCソフトウエアは「TurboCNC」、なんと無償で無制限利用できます!が、対応OSは「DOS」です・・・
無償 | |
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主な用途 | Gコードを読み込み、ステッピングモータードライブ基盤に信号を送り込む
バックラッシュを取り除いたり、テーブル移動最大速度を設定できる |
代表的な製品名(有償) | |
代表的な製品名(無償) |
|
使用例 | ロボットの部品、バイクの部品、機械部品一般等 |
しかしですねえ・・・
この組み合わせは、はっきり言って「今どき」ではありません。10年前の流行り、といったところです。
恐ろしい世の中でして、
- オープンソースのCNCソフトウエア「Grbl」
- Grblで制御できるAVRマイコン基盤「Arduino」
を組み合わせることで、数千円程度でCNC制御ができてしまうそうです。なんということでしょう・・・ネット上には多くの情報があります、もしご興味がありましたら検索してトライしてみてください!(ぜひ掲示板にレポートを!)
いやいや俺はそういうところに手間を掛けたくないんだよ、という方にはオリジナルマインドの「TRA100/150」があります。この製品は
- CNCソフトウェア
- ドライブ基板
- 電源
がワンパッケージになっており、それぞれの組み合わせやCNCソフトウェアの設定で悩むことは全くないわけです。パソコンとドライブ基盤との接続もUSBでコンパクト。かなり高額な基盤セットではありますが、実際に購入された方にお伺いすると取扱いの容易さに対する満足度は高い様子です。
長々と語ってまいりましたが、まとめると
という感じでしょうか。
ステッピングモータードライブ基盤、CNCソフトウェアを入手する前に
ステッピングモータードライブ基盤、CNCソフトウェアを入手するための心構えです。
- できるだけ事例の多いドライブ基盤、CNCソフトウェアを使用する
- メーカーサポートが期待できるドライブ基盤、CNCソフトウェアを使用する
- 質問できる方がいるドライブ基盤、CNCソフトウェアを使用する
CAD、CAMと同じですね。