Z軸を制するものは、CNCを制す!・・・というのは大げさじゃあないんです。
この作業の重要性はCNCに限ったことではありません。
が、やはりCNC(コンピューター数値制御、computerized numerical control)は数値制御っていうくらいですからその精度にはこだわりましょう!
正直、加工に求める精度はあなたが何を作るかによります。そして、機械部品を作るのであればその精度は意外とうるさくなく、ねじ穴その他にうまく遊びを作ることで0.2~0.3mm前後の誤差があったとしても、組み立てで入念な計測をすることで目的通りの精度で機械を完成させることができます。
が、もちろん加工精度は高いに越したことはありませんしベアリングの打ち込み穴など0.05mm以下の精度を求められる場合もあります。
先に説明した「CNCを使おう ①バックラッシュを取り除く」と合わせて、Z軸の垂直をキッチリ出しましょう。
もちろん大型の工業用(我々のフライスはホビー用でっせ)とは、機械そのものがもつ精度は段違いですが、それでもこのような作業を積み重ねることで加工精度をワンランクあげることができるんです。
まずはZ軸の傾きを計測しましょう。
この画像はかなりいい加減にやってますのであまり参考にはならないのですが・・・(前項で偉そうなことを言っておきながら、スミマセン)
要は主軸に中心軸から5cm位離れた位置にダイヤルゲージを掴み、回転させます。
ミツトヨ DG 2046S ダイヤルゲージ
- 何度も申し上げておりますが計測機器といえばミツトヨが一番。
- いつもなら高価で手が出ない、というところですがダイヤルゲージは比較的手が出る金額です(笑)。
- 廉価な製品でも千円程度しますから、ここはミツトヨを買っておきましょう!そのほうが気分いいです!
そして主軸を手で回転させ(間違っても動力でまわさないように・・・)、
- X軸プラス方向、マイナス方向
- Y軸プラス方向、マイナス方向
の値を計ります。まあ、この数値そのものは大きな意味はなく、Z軸が
どちらにどのくらい傾いているか
を見える化することが目的です。
ダイヤルゲージをつかむには「マグネットベース」をばらして、その軸をドリルチャックに掴むとよろしいようです。
つかんだダイヤルゲージは、テーブルに垂直になっていることが好ましいです。傾いていても理論上問題なく計測できますが・・・つまりこの画像はいい加減だってことです、スミマセン。
傾きを修整します。
傾きを見える化したら、修正します。
具体的にはZ軸の取付ベースの取付ネジを緩め、スペーサーを挟み込むことで傾きを修整するわけです。
大抵のホビーフライスはZ軸の取付は4本のボルトで締結されています、これをいったん緩めます。ボルトを抜いてチェックしましょう。
ご存知かもしれません、ボルトも「固さ」があります。手に入りやすいからと言ってホームセンターで販売されているスチールやステンレスのボルトを使用することはお勧めできません。強度が足りないのです。
- ハイテンボルト
という名前で販売されている高強度のボルトを使用しましょう。この機会に取り換えておくことを検討してください。
さて、緩めたボルトに挟み込むスペーサーですが・・・
スペーサー代わりにフィラーテープを使用します。
フィラーテープ。
機械の高さ調整、スキマ測定等に使用するもので、SK焼入鋼という硬い材質のごく薄いテープです。
特筆すべくはその精度。厚みは0.01mm刻みでラインナップされており、その公差は0.003mmという優れもの。
これを適切な長さに切って、Z軸が傾いている側に挟み込んで傾きを治そうってわけです。
消耗品でかつ規格品だけあって価格は手ごろですから、いくつかの厚みのフィラーテープを入手しておいてください。もちろん何枚か重ねて使用しても問題はありません。
フィラーテープ 0.01mm×1m
- 0,01mmだと少々薄すぎるかもしれません、0.03mmも持っていた方がいいかも。何枚か重ねて使用しても大丈夫。私がそうしてますし、一度これで垂直を出した状態で5年近く使用していますがその後の経年変化もありません。すごい!
- いろいろ使い道あります!
フィラーテープを入れて、ボルトを締め直して計測して・・・の繰り返しです。
あとはフィラーテープを挟み込んで(赤丸がそれです)ボルトを締め付け、また最初のようにダイヤルゲージをつかんで回して計測して・・・
の繰り返しです。
ボルトの締め付けトルクには注意してください!均等に締め付けないとその締め付け具合で傾きが変わってきます。正確にやるならトルクレンチを使用すべきですが、まあ数回に分けて最終的に力いっぱい締め付ければ問題ないと思います。
これで作業完了です!
作業そのものはカンタンなはず、必要なのは道具と根気だけ。
いかがでしょう、多少の道具は必要ですが作業そのものはカンタンなはずです。
ポイントは
- じっくりと時間をかけて作業すること
だけですね。道具と根気があれば大丈夫です!
最後に一つ。
Z軸にスイング機構があるフライスがあります。これをZ軸の校正に使用できないか?と思われるかもしれません。が、このスイング機構ははっきり言って役に立ちません。役に立たないというよりも「害悪」でしかないんです。
このスイング機構でゼロコンマ○mmクラスの位置決めはできません。もっとおおざっぱな角度決めしかできません。しかも使っているとこの部分がずれてくることさえあるんです・・・
なので、もしあなたがこれからフライスを買う、というのであれば
Z軸にスイング機構のないフライスを選ぶ
ようにしてください。もしあなたがすでにフライスを持っていて、スイング機構がついているのであれば・・・なんとかしてこのスイング機構をキャンセルしましょう。溶接するなり、プレートを当てて固定するなり。
動くところは少ないほうがいい、というわけです。