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GRヤリスにジュラルミン削り出しシフトノブを取り付ける!

今回のご依頼は知人より頂きました。

 

GRヤリス、ご存じでしょうか。

 

世界ラリー選手権(WRC)を戦うマシンのベース車両として開発されたスペシャルヤリス(いわゆるヴィッツ)です。2020年1月に開催された東京オートサロンでファーストエディションの予約を開始。2020年9月、あっという間に予約完売。あのコンパクトなマシンに搭載されたエンジンは1.6リッターなんと272馬力!正気の沙汰じゃないですね・・・。

 

GRヤリス


※画像は公式サイトをスクリーンショットしたものです。https://toyotagazooracing.com/jp/gr/yaris/

 

このスペシャルマシンを購入される方はやはりこだわる方。純正のシフトノブでは戦えない、と判断されてのご依頼と相成りました。

まずは3Dプリンタ(熱溶解積層方式)で試作品を作る

先に書いたとおり、このスペシャルマシンGRヤリスを購入される方はこだわる方。

 

届いた図面がこの通り・・・!微妙なサイズ違いで複数のトライアルを行いたいとのご要望。

 

GRヤリススペシャルシフトノブの図面集(4種)

 

わかります、わかりますよそのこだわり!

 

ですが、これを一つ一つジュラルミンで削り出してトライアンドエラーをやるには手間も費用も掛かってしまいます、そこで登場するのは3Dプリンタ。

 

これらの図面をFusion360で起こし、スライサソフトに取り込みます。

 

GRヤリススペシャルシフトノブのスライサシミュレーション

 

まあ、ほぼ単なる球体なのであまり見て面白いスライスシミュレーションではないです。

 

ちなみに、格子状に見えている部分は「塊」の部分です、スライサソフトの設定により、この塊部分の材料(フィラメント樹脂)を節約するために充填度を変更させることができます。充填度100%ですとぎっちり樹脂が詰まりますし、充填度30%くらいですと画像のように格子状の中空に仕上がります。このあたりはスライサソフトの機能で自動的に構成してくれます。

 

できた試作品はこちら。

 

GRヤリススペシャルシフトノブの試作品

 

なにしろ3DプリンタにGコードを食わせれば、ほっておいてもこのような成果物ができるので試作品作成にはもってこいです。とても楽ちんです!

 

実際にこの試作品をGRヤリスに組付けて、走行テストをこなしていただきます。樹脂製の試作品といえどそれなりの強度は持っていますから、テスト走行レベルであれば十分に耐えます。結果的に決定稿図面を確定し、いよいよジュラルミン(2017)で本番の加工を行います!

削り出しの段取り検討

このシフトノブ、手作業で削り出せる形状ではないのでCNC旋盤で切削します。

 

CNC旋盤のプログラムに関しては、以下を参照してください。かなり古い・オリジナル的な技法ですのであくまでも参考程度に。
CNC旋盤でダイスホルダを作ってみようぜっ!①プログラム作成

 

しかし、段取り(切削順序)には注意が必要です。もう一度図面を見てみましょう。

 

GRヤリススペシャルシフトノブの決定稿図面

 

色付きの部分がシフトノブになるのですが、これ「掴むところ」がないのです。

 

旋盤で加工する都合上、必ずどこかに3爪チャックでがっちりと材料を「最後まで」掴む円筒部分、がありません。どうしたらよいのか?今回は以下順序で加工を行うことで解決します。

 

  1. 中央下部の座繰り部分を中ぐり加工で座ぐる
  2. ネジ穴を加工する
  3. ネジ穴にボルトをねじ込み、それチャックに咥えて球部分の加工を行う

 

この方法ならばがっちりと材料を咥えたまま最後まで加工を行うことができます。

ジュラルミンの切削

座繰りとボルト穴作成はさくっと終わらせます。
※画像取り忘れ、ごめんなさい。

 

作ったボルト穴にボルトを・・・あれ、12mmの細目ボルトがない、やむを得ずタップをそのまま軸としてチャックに咥えます。

 

GRヤリススペシャルシフトノブの削り出し初期段階

 

あとは少しずつ球を削っていきます。

 

倣い旋盤のように「球を削るパス」を遠くから回し、少しずつ材料に近づけていきます(これはGコードのループ処理で行います)。

 

GRヤリススペシャルシフトノブの削り出し途中段階

 

最後の数パスは切込みを0.05mm以下まで減らします。仕上げとして600番くらいの紙やすりにオイルをたっぷりと付け、細かい凹凸を取るとともにヘアラインで仕上げます。

 

GRヤリススペシャルシフトノブの仕上げ段階

 

この「旋盤によるヘアライン仕上げ」はとても美しい仕上がりを容易に実現できるためお勧めの加工方法なのですが、紙やすりから落ちた研磨材は旋盤のベッドを凄まじく痛めてしまいます。

 

ですから、この加工を行う場合はベッドを新聞紙等できちんと覆ってから行うようにしてください。できるならば、やらないのが一番ではあります・・・。

GRヤリス用ジュラルミン削り出しシフトノブの完成

仕上げのヘアライン加工が完了しました!

 

タップから出来上がったジュラルミンシフトノブを取り外して、チェックを行います(眺めて悦に入る)。

 

GRヤリススペシャルシフトノブ

 

GRヤリススペシャルシフトノブ

 

ここまで丸いものは削ったことがなく、綺麗な球になるか少々不安でしたがかなりの精度で作り上げることができました。

 

丁寧に梱包して発送します。

GRヤリスへの取り付け

GRヤリススペシャルシフトノブ

発送から数日、到着のご連絡を頂きました。

 

装着!下穴の大きさもバッチリで操作良好です!まずは完璧な造形、ありがとうございます。
お昼に少し乗ってきたのだが、シフトノブの握り心地、滑り心地、ともに最高です!
あの重さならギア抜けの心配もなさそうです。

 

よかった、気に入って頂けたようでなによりです!

 

こだわりのマシンのこだわりのオーナーからの、こだわりのご依頼を何とかこなすことができました。


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